雄太のためにクリーニングに出したはずの浴衣が、

まさか、先生に会うためのものになるなんて。



あたしは複雑な思いで、先生を待っていた。


雄太と浴衣で夏祭りに行ったことは何度もあったけれど、こんなふうに、きちんと美容院で着付けと髪型のセットをしてもらったのは初めてだった。

前の晩は、滅多に塗らないマニキュアとペディキュアを塗り――ご丁寧に、トップコートまで塗った。


完全に、浮かれている自分がいる。

熱に冒された自分を戒めなければならない。


でも、それは――

先生の誘いにのってしまった時点で、負けたようなものであった。


「――行こうか」


気がついたら、あたしのすぐ横に先生の車があった。

というよりも、付き合っていたころとは車が代わっていたから、気がつかなかった。


慌てて乗り込もうとしたが、浴衣だからすそがもつれて上手く歩けない。

すると先生が、助手席に回ってドアを開けてくれた。

なんだかお姫さまみたいな扱いにドキドキしてしまって、あたしはまた自分が情けなくなってしまった。



あたしは、なにをしているんだろう。