席について、あたしは思わず大きなため息をもらしていた。

偶然にしちゃあ、神さまも意地悪すぎる。


「前に、会ったの?」


「えっ?」


「いや、そんな話してたじゃん」


ああ、と曖昧にうなずいて、あたしは早々に話題を変えた。

やたら墓穴を掘って、雄太に感ずかれることもしたくない。


「ほらほら、今日のランチメニュー、唐揚げだよ」


メニューを見せながら微笑むと、すぐにふたりとも、さっきあったことなんて忘れてしまったようになった。


でもあたしの心の中は、ずいぶんと動揺していた。

それは無意識のうちに、“なにか”を期待していた自分に気づいたから。


あの時、あたしは先生に――なにを期待していたんだろう。


馬鹿だなぁ、と、つくづく思ってしまう。

年端もいかぬ少女じゃないのに。



口からもれるため息に、このとき自分では全く気がついていなかった。

でも、このとき雄太は相変わらず敏感な神経で、あたしの異変に気づいていたんだと思う。



そしてあたしは、このとき雄太の異変には、全く気づいていなかった。