「これ。零ちゃんにあげる」


そう言った雄太から差し出されたのは、ピンク色の、小さな長方形の箱。


「...どうしたの?」


「ううん、別に」


あたしは不思議に思いながらも、その包みにかかっている真っ赤な細いリボンをといた。


中から出てきたのは、口紅だった。


「ほんとに、どうして?」


「いや、ただ――零ちゃんに、似合うと思って」


キャップを外すと、淡いさくら色の――あたしに似合うかな?という色合いの口紅が顔をのぞかせた。

化粧はするようになったけれど、いまだに口紅だけはぬらないから、少し不安だった。


「つけてみてよ」


雄太にうながされて、あたしは慣れない手つきでくちびるに紅をすべらせる。

鏡を見ると、それは意外にも、あたしのくちびると、顔によく馴染んでいた。


「正直、あんまり口紅なんてぬらないから――似合ってるのかな」


あたしが不安げに笑うと、雄太は真面目な顔をしてうなずいた。


「似合ってるよ、すごく」


雄太にじっと見つめられて、あたしは思わず目をそらした。