記憶が鮮やかによみがえる。


先生とのはじまりは――

ちょうど、このあじさいがきっかけだった。



先生のことが、好きで好きでしょうがなかった、あの頃。




「――零ちゃん?」


あたしを心配する雄太の声にも、しばらく応えることができなかった。


胸の奥が苦しくなって、雄太がいることも忘れて――

あたしは、泣いてしまった。


「零ちゃん、どうしたの」


隣で雄太はわけもわからず、ただおろおろとしている。


「ううん、違うの――目に、ごみが入っただけ」


無理に笑おうとして、うまく笑顔が作れなかった。

人さし指で涙をぬぐっても、それじゃあ間に合わないくらいに涙が溢れてくる。


「ほんとに、ごめん――なんでもないから」


あたしは涙を隠そうと、雄太に抱きついた。


――あたしは卑怯だ。

こんなときまで、雄太の優しさを利用している。



もう、隠しきれそうになかった。


あたしの心のなかは、こんなにも先生で染まりきっている。



あれから6年経った今でも――

先生のことが、好きでしかたがない。