1気筒のエンジンは、その振動がお尻にもろに伝わってくる。

腰が痺れてしまいそうな感覚のなか、雄太のバイクはずいぶんと遠くまで来ていた。


「――怖くない?」


声を張り上げて雄太が聞く。


「大丈夫!」


あたしも負けないくらい大きな声を出したつもりだったが、そのエンジン音とマフラーから出る煙にかき消されてしまった。


少し頭を傾けると、お互いのヘルメットがコツンとあたる。

雄太の背中にしがみついたまま、あたしはぼんやりと考えを巡らせていた。



――先生とは、こんなことはなかったな。

移動はすべて車だったから、ふたりの間には必ずすき間があった。


こんなに身体と身体がくっつくのって――それこそ、抱き合った時ぐらいのものだった。


シャツ越しに伝わる雄太の背中の熱が、なんだか不思議だった。


――先生とは、こんなことはなかったから。




でも、

あたしはどうして、雄太と先生を比べているんだろう――