「久しぶりにさ、ちゃんとしたデートがしたいなって思って」


そう言って雄太は屈託なく笑った。

どうやら、今日の目的はそれだったようです。


「零ちゃん――寝てたでしょ。ごめんね、急に」


ぼうっとしていたあたしは、慌てて自分を現実に引き戻す。

ううん、と曖昧に笑うと、雄太は神妙な面持ちになった。


「具合でも悪い?」


「い、いや!大丈夫――」

あたしは顔の前でぶんぶんと右手を振って、とびっきりの作り笑顔を浮かべた。


――ごめんね、雄太。


あたしは罪悪感でいっぱいだった。

こんなにいい彼氏がいるのに、あたしはなにをしてるんだろう。





うちを出ると、見覚えのあるバイクがあたしを待っていた。


「あれ?雄太、これって――」


「うん、実家から持ってきた」


雄太はそう言うと、ピースサインを作ってみせた。


雄太のバイクは――たしか、大学2年の時に彼が必死でバイトして買ったもの。

中型二輪の免許までわざわざ取りにいって買った、お気に入りだっけ。