ひとみ先輩が、大変な状況にいるのがわかった今でも――

ひとみ先輩のことを妬んでいる自分がいる。



ざまあみろ。

そんな感情さえ持ってしまうあたしがいる。


頭がおかしくなりそうだった。


そして、目の前に先生がいるというこの状況も。



運ばれてきたコーヒーカップを持ち上げて、あたしはため息をついた。


「どうした?」


「い、いえ――」


笑ってごまかそうとしたけれど、顔がひきつって上手く笑えない。

そういう先生は、静かにあたしを見つめている。


息がつまりそうだった。



「あ、あたし――もう、帰りますね」


これ以上は、もう耐えられない。

あたしは一気にコーヒーを飲み干して、立ち上がろうとした。



その時。


「――なあ」


先生に腕をつかまれて――

ようやく落ち着きかけていたあたしの心臓が、再び跳ね上がった。



「また、会えないか?」



思わぬ言葉に、戸惑いを隠せない。

あたしは首を小さく横に振るだけで精一杯だった。



逃げるようにその手を振りほどいて店の外に出た。



明るい日射しを浴びて――

ようやく、雄太の顔が頭に思い浮かんだ。