この人がいなかったら、あたしは公衆の面前で醜態をさらしていたに違いない。

でもあまりに恥ずかしくて、あたしはその人の顔をまともに見れそうになかった。


早くこの場から立ち去りたい!

そんな思いでいっぱいだったが、あたしはとりあえずもう一度お礼を言おうと、改めて顔を上げた。



「――!!」



そこであたしが絶句したのは、言うまでもない。

あたしを間一髪助けてくれたのは




先生、だったから。




「前よく見て歩けよ」


と、にやにやしている先生とは対照的に、あたしの表情は凍りついていた。



心臓が止まるかと思った。


「――どうしたんだよ、病院なんかで」


それはあたしが聞きたいことだよ、先生。


「あ、友達のお母さんが入院してて――ほ、ほら!仲良かった“アキちゃん”の」


「ああ、なるほど」


あたしは動揺して饒舌になるけれども、先生はいたって普通で――6年前と、おんなじだった。

あたしだけが、いっぱいいっぱいになって――それも、昔に見たような光景で、



あたしはあの頃に戻ったような錯覚に陥りそうだった。