あたしは思わず口元を押さえた。

それでも、あたしの漏らした嗚咽が高い天井に響いている。


『ゆう、た...くん――』


あたしは何と答えればよいのかわからなかった。

そんなあたしに悲しそうな笑顔を見せて、雄太はあたしの頭を、小さくなでた。


『――ごめんね、いやな思いさせて』


今までずっと溜め込んできたすべてを吐き出したことで、雄太はずいぶんと冷静さを取り戻していた。

最初の冷たさや怒りに満ちた口調は、もうどこにもない。


『ぼくは別に、なにか答えを求めてたわけじゃないから、安心して。付き合ってほしいなんて言うつもりは、微塵もないから』


そう笑って背を向けた雄太に、あたしは返す言葉がなかった。


雄太が、階段を降りていく――

その光景を、あたしは虚ろな目で追いかけていた。



『あ』


その時、雄太が急に思い出したようにこちらを振り返った。


『おれはこれからも、零ちゃんの“友達”としてそばにいるから。でも、“恋人”としておれが必要になったら――いつでも言ってね』


そう言って笑った雄太は、いつも通りの彼だった。