抵抗することをやめて、もうどのくらい経ったのだろう――



少し高い天井に響いた下校時間を知らせるチャイムの音で、あたしたちは身体を離した。


『ごめん』


先に口を開いたのは、やっぱりあたしだった。

もうすっかり乾いてしまったほほをぬぐうと、あたしは慌てて立ち上がった。


『謝らないでよ』


雄太は寂しそうに笑った。


『――ぼくじゃ、だめみたいじゃん』


『...えっ?』


雄太の視線が宙をさまよう。

あたしは雄太の言ってることの意味がわからなかった。


『どういう――...』


どういうこと?
そう言おうとしたあたしに、雄太は少し苛立ったようだった。


『にぶすぎ。むかつくよ』


するといきなり、雄太があたしのすぐ目の前まで顔をぐっと近付けた。

それこそ、キスされるんじゃないか、ってほどの距離に。


そして、きわめて静かな口調で言った。






『ぼくはね、零ちゃんのことが好きなの』



あたしは返す言葉が見つからなかった。