6年前――



『今日は、ふたりで先帰ってて』


そう言ったあたしに、アキは明らかに不審そうな顔をした。


『どうして』


『あ、ちょっと用事があって――担任んとこ、行かなきゃならないから』


あたしは精一杯の作り笑顔、を浮かべていたと思う。


『そう...。じゃあ、帰る?』


そう言ってアキは雄太を仰いだけれど――雄太は、恐ろしいほど冷めた目であたしを見据えていた。

その視線からあたしは早く逃げたかったし、なによりひとりきりになりたかった。


そんなあたしに気づいてなのか、アキが雄太の学ランのすそを引っ張った。


『ほら、行くよ!』




あたしも逃げるように教室を出てそのままあてもなく校舎の中をさまよい歩いた。

やっぱり、考えてしまうのは――先生のことばかり。

先生にふられたことを、まだきちんと受け止めきれずにいた。




3日前、先生があたしのことを必要としなくなってから――

あたしは、これからどうやって生きていけばいいのかわからなくなっていた。



それくらい、あたしは先生一筋だった。