「先生を、ってこと?」


「いや、ちがう」


そこでアキは難しい顔をして、何か考えるような素振りを見せた。


「あれはあたしが大学1年のときだったと思う」


ソファにあったクッションをおもむろに胸に抱き寄せて、あたしはアキの話に聞き入った。


「学科の友達がさ――彼氏を寝取られたって泣いてて。詳しく話を聞いたら、その彼氏をそそのかした相手がひとみさんだったの」


あたしは衝撃を受けた。


「で、その友達の彼氏も――結局はひとみ先輩にとっては遊びだったみたいで。ひとみさんの本命は当時の、うちのサークルの部長だったって聞いたことあるし」


あまりのショックに、あたしは頭が回らなかった。


ひとみ先輩は――

あたしの憧れのような存在だったから。


綺麗で、
みんなにも好かれてて、
勉強もできて――



「だから、ひとみさんは先生以外にもたくさん男がいたのよ」


ため息しか出なかった。

なんだか、ひとみ先輩に裏切られた気がして。


「あんまりよくない噂も――聞いたことあるしね」