あたしがどれだけの想いをしてきたか――

雄太と同じくらい理解してくれているアキは、なんにも言わずに頭をなでてくれている。


「なんだか――」


これから、平然と暮らしていける自信がない。

何かあるたび、先生のことを考えてしまいそうだった。


「雄太に失礼だよね」


アキは否定しなかった。

肯定とも思われる沈黙が――ふたりの間を流れる。



自分が情けなかった。

あんなにあたしのことを大切に想ってくれている人がいるのに。


あたしは、先生という過去に囚われてばかりいる。


「あの夏祭りの日、雄太はなにか言ってた?」


「ううん――なにも」


アキは小さくそう言ったけれど。

あの日のあたしは間違いなく、冷静さを失っていた。


尋常じゃなかったあたしの異変なんて、きっと雄太にはお見通しだったはずだ。


「そういえば――」


急にアキが、思い出したように話を変えた。


「ひとみさんの彼氏、前にあたし見たことあると思う」


なんだか変な話だった。