少し目にかかる長さの黒髪。
すらりとした背。
落ち着いた瞳をのぞかせる眼鏡。
形のよい綺麗な指先。


全部全部、あたしの好きだった先生だ――





「あ、電話」


突然鳴りだしたケータイの持ち主は、ひとみ先輩だった。

電話をとり、その場を離れていくひとみさんを見て――あたしとアキはようやく我にかえった。


「あ、えーと...あたし、雄太を探してくる!」


変な気をきかせて、アキはしらじらしくその場から走り去っていく。


「――ちょっ、アキ!」


ふたりきりになんて、しないでほしい。

あたしが真っ青になっていると、久しぶりに、低い笑い声が聞こえた。


「あれが、おまえの言ってた“アキちゃん”か」


驚いて振り向くと、あの頃となんら変わりない笑顔の先生が立っていた。

可笑しそうに、口元をおさえて笑っている。


あたしはなんだか拍子抜けしてしまって――

先生を見上げたまま、しゃがみこんでしまった。


「――久しぶりだな」


さしのべてくれた先生の手をとりあたしは震えながら――静かにうなずいた。



6年ぶりの再会だった。