「いえいえ、可愛いアキのためなら何でも買ってあげる」


あたしが機嫌を取ると、アキは嬉しそうにあたしの服のすそを引っ張った。


「あっちにね、たい焼きの看板が見えたの!だから行くよ」


浴衣だから歩きにくいはずなのにアキはあたしよりもスイスイと、人波をかきぬけていく。


「――雄太、あとで迎えにきてね〜」


同じ学科の友達なのだろうか。

いつの間にか雄太は数人の男の子たちに囲まれて、なにやら笑って話し込んでいた。


そんな雄太はおいてきぼりに、アキとあたしは神社の本堂の敷地へと足を踏みいれる。


「あったあった」


目的の、カスタードクリームたい焼きをゲットして――あたしとアキは、少し陰になった階段に座りこんだ。


「やっぱ人多いわねぇ」


なかなか規模も大きいので、地元のタウン誌にも載るくらいの祭りである。

祭りに来た人たちもかなり多い。


「こんなときほど知り合いに会うもんなのよねぇ」


うんうん、と、隣であたしも大げさにうなずく。