朝の風は澄んでいて、若葉の甘いにおいがする。

――これぞ薫風。


その新緑の香りを胸いっぱいに吸い込んで、あたしは家へと続く道を歩いた。





高校2年と3年の時は雄太とはずっと同じクラスだったのだが――理系と文系に別れたこともあり、アキとはクラスが離れてしまった。

それでも3人相変わらず仲がよくて――3人とも、この幡悠大学に進学した。


アキは経済学部の経済情報科。
雄太は頭がよかったから――医学部の医学科。

あたしは、理学部の数学科。


アキとあたしは、偶然にも同じサークルで再会をして、相変わらずのぐだぐだな友情を続けている。

でも、やっぱり、一番大切な――一番大好きな、親友。



雄太とは――

あたしが高校1年のときに付き合っていた彼氏と別れたあとからの関係。


前の彼氏――先生との思い出を、傷を、全てわかったうえで――雄太はあたしのそばにいてくれる。

雄太はずっと、あたしだけを見ていてくれた。


今のあたしにとって、かけがえのない存在だった。