『そんなこと言わないで』


そう言いたくても――言葉が胸につまって、上手く出てこない。


「ほんとは――少し前から、思ってた」


見つめた先生の姿が、涙でかすみ始めた。

先生は、あたしを見ない。


「勝手なのはわかってる。でも、これ以上続けるのは苦しくて」


『あたしには先生しかいないんです』


涙がとめどなくあふれて――伝えられない。


『悪いところは直すから、お願いだから――そばにいさせて』


でも、そんなふうに泣き付くことのできない自分がいる。


「おまえのこと、嫌いになったわけじゃないよ。でも、もう――」


先生はゆっくりと喋っている。

口を挟むことは十分に可能だった。


でも、あたしにはそれができなかった。


「だから、別れてほしい」


メールだと、機械的な文字の羅列だから――どうにか持ち堪えていたあたしの想いが、もろくも崩れていくのを感じた。


あたしの名前を呼んでくれた――

あたしのことを好きだと言った声で聞く、決定的な言葉。