「――じゃあ、まだ...ケンカしたままなの?」


あの日から何日も経ったが――

あたしの赤く腫れた目を見て、アキちゃんが言いにくそうにあたしに聞いてきた。


「うん――」


グラウンドからは、野球部の走り込む声が聞こえてくる。


「でも――」


アキちゃんは難しい顔をした。


「あんまり悪く言いたくないけど――先生、ちょっとひどいよ」


あたしは何も言えなかった。


「誕生日も忘れて――零を、こんなに泣かせるなんて」


放課後の教室には、あたしたちの他には誰もいない。

西日の差し込む部屋で、あたしはアキちゃんと雄太くんの優しさに甘えていた。


「これから、どうすればいいんだろう――」


誰かに教えてほしかった。

あたしは誰かが手を引いてくれなきゃ、なんにもできない。



瞳の奥に夕焼けの色を湛えた雄太くんが、しずかにあたしを見つめて言った。


「ぼくらは、零ちゃんの味方だからね」


穏やかな目をして、あたしの頭をぽんぽんとなでたから――あたしは涙が止まらなかった。



まるでその仕草が、先生みたいだったから。