アキちゃんと、街をふたりで歩いている。


いつものように、あてのない買い物だろうか。

ふたり制服のまま、なんの目的もなく歩いた。


『あ、零!あたしこっちに用事があるから――』


アキちゃんはそう言って、右の角を曲がって、路地裏に消えていった。


さて、あたしはこれからどうしようか。


そのまままっすぐ歩くと、明らかに風景が変わってきてしまった。

薄気味悪い、廃墟のようなところをひとり歩く。


ああ、これは夢なんだ、と――自分でもわかる。


引き返そうと後ろを振り返るが、濃い霧に包まれて、来た道がわからない。


あたしは泣きそうになった。

ひとりじゃ、なんにもできない。


『あ――!』


あたしは霧の向こう側に、人影を見つけた。


『先生!』


先生だった。

でも先生は、あたしの顔を見て、悲しそうに笑っただけだった。


よく見ると、先生の隣にはあたしと同じぐらいの歳の女の子が立っている。


『だぁれ?しょうちゃん』


『――知らない』



――“しょうちゃん”。

あたしがずっと、憧れていた呼び名を――いとも簡単に彼女は口にした。