「――今日は、どこに行くんですか?」


やっぱり先生に会える喜びには勝てない。

あたしは無邪気に笑った。


ケータイは――お母さんからの連絡を無視できるよう、電源を切ってある。


「クリスマスイブですね!なんか――夢みたい」


先生は何も言わない。

ただ、困ったような顔をして――黙っている。


「先生?」


「あのさ、――」


近くにあった広い路側帯に車を停めて、先生は言いにくそうに話しだした。





「5時から、バイトが入った」





とっさに、理解できなかった。


「――え?」


「ほんとに、ごめん――」

急に、心臓の音が速くなっていくのがわかった。


「ごめん」


――なにかの、悪い冗談?


「――うそ、でしょ?」


信じられなかった。


「先生言ってたじゃん!イブの日までバイトいれるほどバカじゃないって!」


「あのな、聞いてくれ」


いいわけなんて、聞きたくなかった。


「ひどいよ、先生...」


「おれだってほんとは、休みとってたんだよ。でも、今さっき急に電話が――」