先生が最近急にバイトを始めた。

あたしの門限よりも早く帰らなきゃいけないことが、近ごろは増えてきている。


「――忙しいんですか?」


「うん、まぁ――ちょっとね」


3月までで終わるから、と、先生はあたしの頭をなでた。

何のバイトなのかは、あたしは知らない。


大学4年生って、バイトをするくらいの――余裕があるものなの?





「クリスマスじゃないの?」


アキちゃんは、何も不思議がらずに言った。


「どゆこと?」


「いや、だからさ――あんたのクリスマスプレゼント代を稼ぐためのバイトなんじゃないの?」


「ああ」


あたしはようやく納得した。

教室の壁に掛けられたカレンダーを見ると、たしかにあと一ヶ月ほどで、恋人たちの一大イベントが訪れる。


「それかあ!」


不安がよぎっていたあたしの心が、一気に晴れわたった。

単純なあたしは、すぐに笑顔になる。


そこで、雄太くんがボソリとつぶやいた。


「亜樹ちゃん、ぼくらはさびしくおいてきぼりだね――」