今までに味わったことのない痛みが身体の芯を貫いたとき――

不覚にも、あたしは泣いてしまった。


どんなに痛くても怖くても、泣かないって決めたはずだった。


「――大丈夫か?」


これには、普段は余裕のある先生も――落ち着きを無くしていた。


「ごめん、もうしないから」


「――違う」


もちろん痛いこともあったけど、

先生のぬくもりがあまりにも優しくて幸せで――

あたしの涙は止まらなかった。


「――ごめん」


先生は、謝りっぱなしだった。







うつ伏せに身体を投げ出すと、隣で横たわる先生が頭をなでてくれた。

この優しくて大きな手が、あたしは大好きだった。


「零」


長い指が、あたしの頬をなでているのがくすぐったい。


先生があたしの名前を呼ぶのは――キスしたい時。

あたしもそれをわかって、小さく顔を上げた。


「好きだよ」


思いがけない言葉に、あたしは照れてうつむいた。



少し肌寒い部屋も――ふたり身体を寄せ合えば、やわらかなぬくもりが心を満たしてくれた。