うちの中学の図書室は、そこそこの広さがある。

教室ふたつ分の壁を取っ払って書庫が作ってあり、またそのさらに奥にも、教室ひとつ分の閲覧スペースがある。



正直、図書室はあまり入ったことがなかった。

広さはあるけど、なんだか図書室って暗いイメージがあったから。


「失礼しまーす...」


久しぶりに来た図書室は、誰もいなくて、電気さえついていなかった。

でも、窓から差し込む西日が眩しくて、部屋の中はオレンジ色に染まっていた。


「外出中、か」

カウンターには普段、司書の先生がいるのだが先生がいないかわりに、外出中と書かれた札がぽつんと立っている。



西日に照らされた部屋の中には、誰ひとりいる気配はない。


「化学...化学、と――」

本棚の周りを歩くと、あの独特な――古びた紙と乾いたインクの匂いがする。

不思議と、嫌いではなかった。



しかし、化学の本って言ったって――どんなのを読めばいいんだろ。

先生に近付きたい気持ちばかりが先走っていて、どうすればいいのかわからない。


とりあえず、目に入った本を適当に取って、奥の席についた。