幸運にも、脱衣所にはしっかりした鍵がついていた。


「――はぁ」


逃げるようにしてここに来たものの、あたしの不安はふくらむばかり。

とりあえずバスタブにお湯をためて、勢いよく身を沈めた。


「はぁ」


さっきから、ため息しかついてない。

こんな時は、どうすればいい?


静かな浴室の中に、ちゃぷん、という水の音だけが聞こえる。


冷えきった浴室にもだんだん湯気があがっていき、もやがかかったようになっていた。

あたしの心の中も、同じようなものだった。


晴れない霧が、一面を覆いつくしている。





風呂から上がり、アキちゃんと選んだ下着姿で鏡の前に立つ。


――貧相な胸に、メリハリのない身体。


「はぁ」


口からもれてくるのは、やっぱりため息ばかりで。



――流されてしまって、いいのだろうか。



そんなことまで、頭をよぎる。


「だめだ」


大げさな言い方だけれど、覚悟を決めてきたはずだった。


「――」


ここにいたって、何も始まらない。

震える手で――部屋へと続くドアを開けた。