駐車場から通じる狭い通路をぬけると、薄暗いフロントがあった。

もちろん無人で、部屋の写真が並ぶパネルが、いやに明るく浮かび上がっている。


「どれがいい?」


無邪気に笑ってパネルを指さす先生とは対照的に、あたしは小さな震えを感じていた。

恐ろしいほど緊張してるぞ、あたし!


「――ど、どれでも」


小さく、そう答えるのがやっとだった。





入った部屋は、思いのほかきれいで広かった。


あたしの中のラブホテルって――

ピンク色で、鏡張りで、薄汚れたイメージだったから。


「――」


ずいぶんあっけに取られてしまった。


そんなあたしの背後から忍び寄る影が。


「どうしたの?」


「!!」


後ろから抱きしめられて、耳に息吹きかけられて――

あたしは必死にもがいた。


「ニシシ」


そんなあたしを見て、先生は後ろで笑っている。

でも、さらに力を込めたのがわかった。


「いや?」


低い声が耳元でやけに響いて――頭がクラクラする。


「いやじゃ、ないです」


あたしを抱きしめる腕に、また力が入った気がした。