「大きなこと言っておきながら、組長を説得できなくてすいません。」



私は、執事と加藤刑事に頭を下げる。



そこは、取調室とは別の部屋で、部屋の中には、私と執事と加藤刑事、そして、床の上には、真木ヒナタが大の字に伸びていた。



真木ヒナタは、取調室の前に倒れていたのを、執事が、軽々と肩に背負って部屋まで運んできた。



取調室は、今、別の刑事が、見張っている。



私達は、別のアイデアを考えるために、この部屋に移動してきたのだ。



「頭を上げてください、小夜さん。別に小夜さんが、悪いわけではありません。逆に、途中、邪魔が入りながらも、小夜さんは、立派にやっていたと思いますよ。」



執事が、床に倒れている真木ヒナタを見ながら、私に言った。



「それにしても、打つ手無しだな・・・。」



加藤刑事が、タバコを取り出して、火をつける。



その様は、手馴れたもので、よくテレビでみるベテラン刑事そのものだった。



「フ~・・・・まいったな。」



タバコの白い煙を吐きながら、ため息をつく加藤刑事。



そして、執事にタバコを差し出して、「吸うか?」と尋ねた。



「いえ、結構です。」



執事は、笑顔で加藤刑事のタバコを断り、別の内容を加藤刑事に尋ねた。



「それにしても、警察署の中が騒がしいですが、何か重大な事件でもあったのですか?」



「・・・・銀行強盗があったんだよ。」



加藤刑事は、少し考えるような表情をした後で答えた。



部外者、ましてや、警察の敵対者とも言うべきヤクザの関係者に言っていいのかどうか、少し考えたのだろう。