「・・・そうかな?」
少し浮ついたような組長の声。
取調室の外にいる私にも、いつもの組長のにやけた表情が感じ取れた。
「そうです。組長は、笹山組で(龍一さんを除いて)一番包容力のある男性です。」
私は、チャンスとばかりに組長を褒めまくる。
「・・・俺が、笹山組で一番なのは、包容力だけ?」
さらに浮つき加減を増す組長の声。
「・・・・(馬鹿)力も一番です。」
適当に答える私。
「フフンッ、そんなこと知ってるけどね。」
私は、組長の機嫌がどんどん良くなるのをドア越しでも肌に感じた。
「それじゃあ、笹山組で一番男前なのはだ~れ?」
ここまで来ると私は、まるで白雪姫に出てくる鏡の役をやっている気分になってくる。
「それはもちろん、(龍一さんを除いて)組長です。」
私は、心の声を省いて声を出す。
「やっぱり、そうだったのかぁ~・・・実は、俺も知ってたんだよねぇ~。」
「ですよねぇ~。」
適当に組長に相槌を打つ私。