確かに礼儀は、と言えば残念なモノだが、
兄としては完璧だ。



「出るよ。」

もう食べ終わったらしい。

兄が会計に行く。
私も立ち上がった。

軽くよろめき、その弾みでため息も出る。


さっきの言葉は出任せでもなかった。
本当に疲れていた。


店を出ると兄はバイクに乗っていた。

「帰ろう。」

「あの寮にですか。」


兄はじっと見つめ返す。


「嫌か?」

「ピアノさえあれば。」


あの部屋より良いのですけれど、と心の中で付け加える。


「毎日でも良い、連れて行ってやるよ。」

「じゃ、言葉に甘えて。」