その倉庫はとても古くて汚かったが
元ステージだったのだ。

都合よく光でピアノが照らされている。


すごく…かっこいい。


「俺さ、リクエストしていい?」

思わず惚れ惚れしていると貴久はボソッと言った。

「ええ。」


自慢じゃないが、大概の曲は弾ける。

私はピアノに近づきながらオッケーを出した。


フタには厚くホコリが積もっている。

きちんと音は出るのだろうか。


「トルコ行進曲。弾いてくれないか。」


試しに音を出してみた。
不思議な事に音程は狂っていない。
よし、弾ける。

「トルコ行進曲か…モーチャルトの?」

「ああ。」