明るい系統の色合いの部屋に柑橘系の香り。 ふわりとした女の子らしいベッド。 私の部屋に、こんなものは無い。 「ピアノ…」 私の、ピアノ。 古くて黒い大きなピアノ。 唯一あの部屋で好きだった大きな楽器はここにない。 ぽろぽろと涙が出てきた。 お母さんの残してくれたピアノなのに。 どこなのだろう。 「ぴんぽーん」 安っぽい音が響く。 私の家はベルだった。 おかしい。 夢なのか? そうなのか?