「いやー、さっきはどうもな!」




目の前でお礼を言う男に、私と綾菜は唖然する。





「何で…倒れてたんですか?」




「あぁ、…行き倒れ?腹減ってたみたいな?風邪ひいてたし。」







聞いた私がバカだった。









男は謝ると、煙草に火をつけた。








コイツ…何なんだろう?







黒いジャンバーと中はTシャツ。



ズボンも黒。





…暑くないのかな。





顔をじっくり見ると、すごいかっこいいコトに気がついた。





「? 何?」



目が合うと、私は一瞬目をそらした。







「あ!名前。何ていうの? 俺は日向 戒 20歳ね。」




「松宮 綾菜 16歳です♪」




「…雛智 奈子、年は綾菜と同じ。」




「ふーん。綾菜チャンと奈子チャンね。」




戒はニコっと笑うと、煙草を吹いた。







「お礼。何がいい?」



「へ?」



突然の言葉に少し驚く。




「お礼ですかぁ??綾菜うれし… モガッ!」


私は綾菜の口をふさいだ。



「いいです。お礼なんて… そんなたいしたコトしてないし。」