一人残された光汰は、ただ奈子の後ろ姿を見つめることしかできなかった。







いつも通っている道が、すごく長く感じる。


戒……


待ってて!





私はがむしゃらに走った。



ただ…戒に言いたくて…








ついた場所は、病院。


「光汰さんは…病院の裏に戒の家あるって言ってたっけ…」


病院の裏に回ると、豪邸のような家があった。



こ…これが戒の家?


唾を飲み込むと、震える手でインターホンを押した。



『どちら様でしょうか?』



女の人の声が機械ごしに聞こえる。




家政婦さんかな?


「あの…!か、戒さんいらっしゃいますか?」



『戒様はただいま外出中です。』


「ええっ!?じゃあ…待ってます。」


『困ります。夜までお戻りになりませんよ。』


「それでも待っ…」


ブチン。



途中でインターホンが切れた。




私は溜め息をつくと、壁にもたれ掛かかる。


「そういえば…いつも戒は私のとこに会いに来たっけ…。」




最初はすごく変人だって思ってたけど…本当は優しいんだよね。




『奈子。』




会いたいよ……







そのとき私の純粋な思い出のなかに、よからぬ思いつきがあった。




「ふふ…こうなったら…」



乗り込むしかないわ!!!




私は逆方向の病院へと走り出した。