ピリリリ♪


突然携帯が鳴る。



私は勢いよく電話に出た。


「戒!?」


『奈子チン?』





「こ、光汰さん…」



『ごめんね。戒じゃなくて。』


「いえ…。ごめんなさい…。」








『あのさ…話したいことあるから今から店来れない?』



話…?



『戒のことで。』


「い、行きます…!」




私は電話を切ると、店へと走り出した。











「光汰さん…!」



店に入ると、光汰は席に座って待っていた。



「あの…話って。」



「うん。戒のことで。…アイツ…家に帰ったよ。」



「え?」



家出してた…って言ってたよね?



「ちょっと前にね。アイツさ、親父が金持ちで成績も優秀だし…自分が見えなくなってたんだと思う。」





「どういう…ことですか?」






「アイツ…大学辞めたって言ってただろ?医大に移ったんだよ。」

光汰は話を続ける。



「アイツの夢は、パイロットなんだ。昔からいつものように言ってて… 大学もそれ関係に通ってたんだよ。でも…病院を継ぐはずだった兄が金を持ち逃げしたんだ。」



聞いたことのなかった話。



私はただ話を聞くことしか出来なかった。




「だから全部アイツに回ってきて…大学も辞めなきゃいけなくなったし、アイツも最初は頑張ってたんだよ。でも耐えられなくなって家を出たんだ。」





…戒。


…初めて会ったとき、もしかして泣いてたの…?




「奈子。アイツ、お前の事すっげー大切にしてるよ。…悔しいけど。」





「光汰さん…!私…行ってきます!」



私は光汰から住所を聞き出すと店を出た。