辺りはもう薄暗く、ひぐらしの鳴く声だけが響いていた。





「か…戒!!待ってよ!」


私は帰ろうとする戒を呼び止めた。





「は?」


振り返る戒の低い声に私は唾を飲み込んだ。


「…あんな言い方…ちょっとひどいんじゃない?」




「お前に関係ないし。」




「でも…」










戒が冷たい。



さっきまでの優しくてチャラチャラした戒は…



いない。





「…優しいフリしてたの?」






どうしてだろう


私は戒の目が見れなかった。










「それが、何?」












…ぶちっ







あぁそう。



ずっと私を騙してたわけだ?



今日誘ったのも、ただの暇潰しなんだ?









「…んた…に」


「は?」









「金だけ持ってるあんたなんかに“いらない”って言われる痛みなんか一生わかんねーよっ!!!」






私はバッグを握りしめて、その場から去った。








最低!



最低!






『あなたは本当に駄目な子ね。』




違うの




『もういいわ。あんたなんかいらない。』
















いらないのは私。