ダラダラと過ごして迎えた夕方、服を着替えてさっきの病院に向かった。
大通りを歩きながら、その人の多さに呆れ混じりの笑みが漏れる。


街にはたくさんの人が溢れ、周りはカップルだらけだった。
この辺りは駅から近くて様々な店があるから、もともと平日でも人は多い。


だから、イヴの今日がそれ以上の人でごった返しているのは、言うまでもない。
都会と言えるほどの街ではないけれど、それでも田舎よりはずっと便利な街だ。


「悪い! 仕事が長引いた!」


十八時を過ぎた頃、信二が病院のロビーにやってきた。


「いいよ、そんなに待ってねぇし」

「そっか。じゃあ、行こうぜ!」

「おう。って、どこに?」

「決まってんだろ! 俺の可愛い妹のところだよ!」

「ちょっ、待てよ!」


信二は驚く俺の腕を引き、病室に向かう。


「病室に行って、どうするんだよ! 俺は面識ないんだぞ!」

「今日会ったじゃん」

「初対面みたいなもんだろうが!」


ようやく信二の手を振り払うと、信二の顔が暗くなった。


「あいつ、去年のイヴもここで過ごしたんだ……。だから今朝、病院を抜け出したんだよ」

「はっ? お前の妹、去年からずっと入院してるのか!?」

「いや、五年前からだ……。あいつは、十五歳の時から入退院を繰り返してるんだ」


信二の言葉に、言葉を失った。