「お兄ちゃん、知り合いなの?」

「ああ、こいつは染井。高校の時のクラスメイトなんだ! で、こっちは俺の妹の美乃」


信二から紹介され、俺は改めて女に会釈をした。


「さっきは本当にごめんなさい」


彼女も俺に頭を下げ、今度はきちんと謝ってくれた。
俺を真っ直ぐ見つめてにっこりと微笑んだ表情は、まるで子どもみたいにあどけなくて、さっきまでとはまるで別人だった。


面倒なことに巻き込まれたと思っていたけれど、今はそんな気持ちは消えていた。


「俺、そろそろ行くわ。染井もそこまで一緒に行こうぜ」

「ああ。じゃあ、お大事に」

「はい」


微笑んだままの女に笑みを返した俺は、信二と病室を後にした。


「お前、今日仕事は?」

「今日は休み。まぁ予定もないし、家に帰って寝るよ。って、久しぶりの会話がこれかよ」


眉を寄せて笑うと、信二も苦笑を零した。


「じゃあ、夕方会わねぇ? 俺、またここに来るし、さっきのお礼もしたいからさ」

「そんなもんいらねぇよ」

「なんでだよー! 頼む! 6時頃、ロビーで待ってるから!」

「わかったよ」


強引な信二に負けて、苦笑混じりに頷く。


「じゃあ、またあとで!」


信二はそう言って、時計を見ながら走っていった。