しばらくすると、白衣を着た男とさっきの看護師がやってきた。
気まずい空気から解放され、ホッとする。
「どこ行ってたの? 体調は? どこかつらくないかい?」
主治医らしい医者がそう問いかけたけれど、彼女は黙ったまま俯いている。
埒が明かないことを察して、おもむろに口を開いた。
「さっき、そこでぶつかりそうになって……。彼女、足を捻ったみたいなんです」
「ああ。君が美乃ちゃんをここまで運んできてくれたんだね」
医者は「ありがとう」と微笑むと、女の足を診察し始めた。
「……うん、軽い捻挫かな。湿布で充分だね。ところで美乃ちゃん、散歩にしては少し心配をかけ過ぎだよね? 僕は、外出許可を出した覚えもないんだけど」
「ごめんなさい……」
優しく諭すように微笑む医者の言葉に、女はようやく謝罪を口にして唇を噛みしめた。
さっきまでに反し、その横顔は今にも泣き出してしまいそうだ。
「とにかくご家族には連絡したから、もうすぐ誰か来るんじゃないかな。たぶん、お兄さんとか」
「えっ? お兄ちゃん?」
「とにかく今日は安静にして。まぁ、その足じゃどのみち安静だし……。お説教はお兄さんに任せて、僕は診察に戻るよ」
途端に眉を寄せた女に、医者は苦笑を浮かべてから俺に会釈をすると、看護師と一緒に病室から出ていった。
気まずい空気から解放され、ホッとする。
「どこ行ってたの? 体調は? どこかつらくないかい?」
主治医らしい医者がそう問いかけたけれど、彼女は黙ったまま俯いている。
埒が明かないことを察して、おもむろに口を開いた。
「さっき、そこでぶつかりそうになって……。彼女、足を捻ったみたいなんです」
「ああ。君が美乃ちゃんをここまで運んできてくれたんだね」
医者は「ありがとう」と微笑むと、女の足を診察し始めた。
「……うん、軽い捻挫かな。湿布で充分だね。ところで美乃ちゃん、散歩にしては少し心配をかけ過ぎだよね? 僕は、外出許可を出した覚えもないんだけど」
「ごめんなさい……」
優しく諭すように微笑む医者の言葉に、女はようやく謝罪を口にして唇を噛みしめた。
さっきまでに反し、その横顔は今にも泣き出してしまいそうだ。
「とにかくご家族には連絡したから、もうすぐ誰か来るんじゃないかな。たぶん、お兄さんとか」
「えっ? お兄ちゃん?」
「とにかく今日は安静にして。まぁ、その足じゃどのみち安静だし……。お説教はお兄さんに任せて、僕は診察に戻るよ」
途端に眉を寄せた女に、医者は苦笑を浮かべてから俺に会釈をすると、看護師と一緒に病室から出ていった。