翌日から、美乃は今まで以上に一生懸命治療に励んだ。
とは言っても、点滴や薬以外では食事を摂るしかなく、彼女は食事の度に吐きそうになりながらも必死に食べていた。


「絶対に熱下げるから!」


口癖のようにそう言っては、毎日何度も体温計と睨めっこをしていた。
美乃はまた笑うようになり、俺はなによりもそれが一番嬉しかった。


「いつうちに来てもいいように、ちゃんと掃除しておいたよ」

「うん! パパとママもすごく喜んでたよ! お兄ちゃんも喜んでたけど、ちょっと複雑なんだって!」

「あいつの方が父親みたいだからな! 俺、あとであいつに殴られるかもな〜」


彼女の体調は安定しなかったけれど、また笑顔を絶やさなくなった。
そんな日々を過ごす中、クリスマスイヴを迎えた。


この日は、美乃と出会ってちょうど一年だった。
俺は病院に行くため、朝からクリスマスカラー一色の街中を歩いていた。


「……っ、やったぁーっ!!」


病室の前に着くと、彼女の叫び声が聞こえた。


「どうしたっ⁉」


歓喜の声音だと理解しながらも、ノックもせずにドアを開けてしまった。


「いっちゃん! あのねっ、熱が下がったよ! 三六度五分! ほら!」


美乃が満面に笑みを浮かべ、体温計を見せてくる。


「本当かっ⁉」

「うん‼」


嬉しそうに差し出された体温計のディスプレイには、間違いなく【36,5℃】と表示されていた。


「やったな! 俺、先生と内田さんに伝えてくるから!」


俺は病室を飛び出し、ナースステーションにいた内田さんに体温計を見せた。


「やったわね! 先生に連絡して、すぐに病室に行くわ!」


彼女は笑顔で喜び、菊川先生に連絡を入れた。