「…おーい。桜井。号令。」
結局、俺は前田のことを考え、今日の授業内容を聞き逃してしまったらしい。
数学教師の気だるい声で、俺はやっと我に返る。
そっか俺、一応学級委員長だった。
号令をしなくちゃ。
『気をつけー、礼。』
まだ礼は終わってないのに、バラバラと立ち上がっていく生徒たち。
せっかく俺が、号令かけてんのにな。
若干虚しくなりつつも、俺も遅れて席を立ち上がる。
数学教師兼、担任に声をかけられたのは、次の瞬間だった。
「あ、桜井。話しがあるから放課後、職員室まできてくれ」
『…は?』
嫌なんだけど。
…なんて言葉が頭をよぎったが、言えるわけないので、とりあえず頷いていく。
頭に浮かび上がってくるのは、説教の文字。
…俺、なにかしたっけな。
一応、真面目に学校生活に励んでるつもりなんだけど。
俺は疑問に思いつつも、怒られる覚悟を決めたのだった。