黒くて艶のある、すこし短めの髪。
それが綺麗にワックスで整えてあって、ツヤツヤしてる。
…そんなこと思いながら、触れるだけじゃ物足りなさを感じて。
あたしは優しく、隼人の髪を撫でようとした。
その瞬間だった。
「んんっ」
伸びをしながら、隼人が自然体な声をあげる。
…どうやら、髪を触っていたら起こしちゃったみたい。
あたしはバレないように、咄嗟に手を引っ込めた。
「え…み??」
隼人の切れ長の目が徐々に大きく開いて、その視線があたしを捉える。
完璧な、お目覚め。
『……。』
何を喋っていいのか、わからない。
さっきの隼人の声を最後にあたしたちの間には沈黙が流れる。
視界はまた、涙で滲むようだった。
…ねぇ、なんで黙っちゃうの??
こんな沈黙、嫌。
昨日までは、こんなの一回もなかったのに。