『……っ』




息が止まったような世界のなか、映るのは前田の顔だけ。



しばらくの沈黙のあと、前田が柔らかい表情で笑いかけてくれる。



「同じクラスの桜井くんだよね??」



前田って、こんな風に笑うんだっけ。



金髪の髪に似合わない笑顔に、俺はハッと息を飲む。



少しずつだけど頬が、紅潮していくのを感じた。




『あぁ。』



なんだか、うまく喋れない。



俺っていつも、どんなふうに喋っていたっけ?


話すのって、こんなに緊張するものだっけ?



自分の心臓の音が、なんだか居心地が悪い。




この時の俺は、自分に精一杯だった。