パトカーの音は、店の前を通り過ぎて何処かに行ってしまった。どうやらスタッフの誰かが通報した訳ではなく、たまたま店の近くを通っただけの様だ。


『…へェ、此れが未来の世界、か。』


沖田さんが興味津々な様子で店内を見渡す。

何かあった時に屯所が蛻の殻だとマズイので、近藤さんを始めとした斎藤さんや原田さんは店内見学には参加していない。

沖田さんと、その保護者役として土方さんが、私達の後に続いて店内へと足を踏み入れた。



閉店後の店は有線も切られ、営業中の賑わいは微塵も感じられない。


『眩しいな…。』


蛍光灯を見上げると、土方さんはそう呟いた。

ドラッグストアは確かに明るい。現代に生きる私達がそう思うんだから、土方さん達にしてみれば、眩しいと感じるのだろう。



『君達の言っている事は、嘘ではなさそうだね…。』


沖田さんが棚に並べてあったポテトチップスを手に取りながら、口を開く。

『見た事無い物ばっかりだし…文字も特殊。外来語かな?俺が読めないのも結構ある。…此れ全部見せられて、【此処は未来ではありません。】って文句付ける方が難しいよ。』



沖田さんは私を振り返ると、ポテトチップスの袋を揺らした。


『…助けたお礼は、これで良いよ。』


愛想の良い笑みはやっぱり何処か寂しげで、私の心に引っ掛かる。

『勿論、差し上げます。』

私が答えると、沖田さんは愉しげに土方さんを振り返った。

『やった…土方さん、一緒に食べます?』


『おい、総司。…ったく、調子が良いなお前。』


子供の様にはしゃぐ沖田さんを見て、土方さんは溜息を付いた。


『悪いな…気を遣わせて。』


『いえ、土方さん達は命の恩人ですから。』



雛が満面の笑みで答える。

『他に興味のある物があったら、言って下さい。』


店長が続いてそう告げる。


『そうだな…』

土方さんが何か思い出した様子で私を振り返る。


『そう言えば、此処は薬を扱ってるんだったな。未来の薬を案内してくれないか?』



隊士達に使えるものがあるかもしれない、と土方さんは続けた。