何かしたい、雛の気持ちは痛いくらい良く分かる。
そもそも、先に命を助けて貰ったのは私達の方なのに。
そのお礼をしたら、更に素敵なおもてなしが待っていて。
…次はどんなお礼をすればいいのか、どうしたら彼等の力になれるのか。
きっと彼等はお礼なんか望んでいないのだろうけど…。
繋がった絆が、少しでも深まるように…
少しでも彼等と深く、強く繋がっていられる様に…
そんな感情が、私にも雛にも芽生えていた。
『高杉さーん!一ノ瀬さーーん!!』
室内の暗い雰囲気を吹き飛ばす様な明るい声が、不意に障子の向こう側から響いた。
『開けても良いですかッ?』
声だけでも分かる、子犬の様な人懐っこさ。…市村君だ。
『市村君?どうぞー?』
雛が声を掛けると、障子が勢い良く開かれた。
『失礼致します!』
姿を現した市村君の表情は明るく、畳に座り込む私と雛の前に正座した。
『あの!今から買い出しに行くのですが…良かったら一緒に如何ですか?』
満面の笑みでそう告げる市村君。
『え…いいの?私達が居たら目立っちゃうよ。』
『大丈夫ですよ!俺が一緒ですし。』
私の言葉に、自信満々に胸を張る。
『それに、今日の夜から特訓なんでしょう?明日はきっと筋肉痛で動けないだろうから、今日の内に町を楽しんでおかないと!』
…全く悪気は無いのだろうけど、彼のその一言で私の胃は少し痛んだ。
どうやら特訓は、今日の夜から開始らしい。
『…うん、まあ此処でグータラしていても仕方ないし。一緒に行ってもいいかな?』
お腹を押さえる私を横目に、雛は首を縦に振った。
『良かった!あ、一応土方さんの許可は得てますから安心して下さい。念の為、心強い護衛も付くみたいですし…。』
『護衛?』