稽古を終え、私達はその足で局長達の元へと向かった。
『…ねェ、美穂。』
不意に雛が小声で呼び掛ける。
『剣術、本当に習うつもり?』
雛は怪訝そうな表情を浮かべながら、私の顔を覗き込んだ。
『…う、うん。』
雛の問い掛けに、小さく頷く私。
こうなってしまった以上、やるしかないのだ。
『へェー…面倒臭がりやの美穂がねえー…。剣術習いたいなんて言い出すとは、思わなかったよ。』
その通りと答えたかったけれど、喉まで出掛かった言葉をグッと堪る。
『まあね…新撰組の人に剣術を教えて貰えるなんて、普通じゃ有り得ない事だし。…経験の一つとして、ね。』
『美穂…大人になったんだね。』
私の思い付きの発言に、雛は感心した様子で微笑んだ。
『…それじゃ、話を付けにいこうか。』
屯所へ入ると、五人で局長の部屋の前まで向かって行った。
言い出しっぺは私だけど、無性に緊張する。
『局長ー、居ますかー?』
部屋の前まで辿り着くと、永倉さんが障子越しに近藤さんを呼んだ。
『…おお、戻ったんだな。入れ入れ。』
相変わらずの暖かい返答に、私は少しだけ安堵しながら部屋へと足を踏み入れた。