『…フンっ!』


先に動いたのは原田さんだった。

唐突に、長い棒を横一文字に大きく振り回す。


細身の藤堂さんは、それを軽く交わすと真上から木刀を振り翳した。



ガツッ!


木と木がぶつかり合う音が、境内に響く。


『…相変わらず、すばしっこい奴。』

原田さんが、余裕の笑みを浮かべる。

『そりゃどーも。…ッく!』

木刀で原田さんの棒を押す様にして跳ね返すと、体勢を整えて再度大きく振りかぶった。

木刀の先が、原田さんの喉下に近付く。



『…甘いな、平助。』


原田さんが、手にした棒をぐるりと一回転させた。


『…!!』

まるで扇風機に飲まれるかの様に、藤堂さんの木刀が巻き込まれる。

『何度もお前の手に乗せられてたまるかってーの。』

完全に体勢を崩した藤堂さんの喉下に、今度は原田さんの棒の先が当てられる。


『…ハイ、俺の勝ち。』

満足気に口許を引き上げる原田さん。

『…っあー!クソッ…今日もアレでいけると思ったんだけどなー…。』

藤堂さんが、心底悔しそうに地面を叩く。

『原田様をナメんなよ?…で、次は新八か。』

藤堂さんに突き付けていた長い棒を引っ込めると、今度は永倉さんへと向き直る。

『あー…今日は絶好調な訳ね、原田君。』

二人の戦いを眺めていた永倉さんが、口許をゆっくり引き上げた。

『ま、俺は平助みたいに直ぐやられたりしねェけど。』

『…さあ、それはどうだろうな。』

永倉さんの言葉に、原田さんが小さく笑う。
名前を出された藤堂さんは、不服そうに眉を寄せた。


『そんじゃ…いっちょやるか。見ててくれよ、お二人さん。』


そう言うと、再度一礼し互いに向き合った。



…二人を囲う空気が張り詰める。