男達が困った様に視線を見合わせる。

『ドラッ…なんちゃらと言うのは、一体何なのだ?此処は新撰組の屯所。外に見張りも多く居た筈だが…君達は、どうやって此処に?』

ゴツゴツした外見とは裏腹に、優しい口調で問い掛ける人物に、私は答えた。
良く良く辺りを見渡してみると…古びた壁に、障子、室内には小さな明かりしか無い。


『…ドラッグストアは、薬や化粧品、食品、日用品なんかを扱っているお店の事で…私達はその店で働いている従業員です。その店の事務所の扉…本来なら押して開く筈の扉が、何故か横にスライドして…』



有りの侭を話すも、それで納得がいく訳がない。
話している私自身も、意味が分からない。

『…スライド、とは?』

またもや意外な所を尋ねられ、私は戸惑った。

『スライドって言うのは…こう、横に滑って開く事で…−−』


何故、言葉が通じないのだろう。
私の言葉に、男達は黙る。


『…あの!助けて頂いて、有り難うございました。』



互いの沈黙を断ち切るかの様に、雛が口を開く。



『私は一之瀬雛。彼女は高杉美穂。で、彼が店長の森下雄二。』



人懐っこい笑顔を交えて、雛は私達を順に紹介した。




『…我々は、新撰組。局長の近藤勇、副長の土方歳三、一番隊隊長の沖田総司。そして後ろに居るのが…斎藤一と原田左之助。』



今時珍しい程綺麗な黒髪。前下がりに切られた前髪から、整った顔立ちが覗く。


土方…歳三。


何処かで聞いたことがある。

大学に行っていない私でも、知っている名前。
確か…そう。有名過ぎて一致するのに時間が掛かったけれど…−−




まさか…−−





『………新撰組って、どういう事?』




私より先に、雛が口を開く。



『さっきも新撰組とか言ってたから、つい冗談かと思ってたんですけど…本当なんですか?劇団とか…そういう事ではなくて?』



得意の営業スマイルは消え、怪訝そうに眉根を寄せる。



『…どういう意味だ?』



今度は土方と名乗った男が口を開いた。


『…我々は新撰組。』