確かにこっちの世界に来てからというもの、人に刀を向ける彼等を沢山見て来た。
勿論、実際に斬られてしまった人達も見てしまった訳だけれど…



…でも、それは彼等を怖がる理由にはなり得ない。



だって---



『…沖田さんは、私を守ってくれました。』



頭の中に浮かんだ言葉が、口から其の侭出てしまった。



『私だけじゃない…強盗に殺されそうになった雛を助けてくれたのも沖田さんです。京の街で襲われたのを助けてくれたのも…。此処に来てからずっと、私達は沖田さんや…新撰組の刀に守られて来ました。ただ面白おかしく人を斬っている訳じゃない。何かを守る為に沖田さんたちが刀を振るうんだって、生きている時代は違うけれど…私にだって分ります。だから…怖くなんて、ありません。』


珍しくハッキリ言い切った私を、驚いた表情で見つめる沖田さん。





…ちゃんと伝わったかなんて分らないけれど。





もしかしたら、こんな本気の回答を望んでいた訳ではないのかもしれないけれど。



…でも、今キチンと言わないといけないような気がした。






沖田さんがあまりにも儚げで、いつか消えてしまいそうだったから---。






『…ホント、変わってる。』





月明かりを背に、沖田さんは優しく口許を引き上げた。




『…ありがとう。』




そう言うと、沖田さんは何も言わずに部屋に向かって足を進めた。



…変な事言ったかな、と少しだけ不安になったけど。


心の奥にあった思いを言葉に出来て、私は少しスッキリした。