横にスライドした扉に驚いたのは、私だけではなかった。


私を見守る店長、私が押し倒した男、男の下敷きになっている雛。


そしてー…










−−−…そんな私達を驚いた様子で見つめる、五人の男。











『…ッくそ、』







一瞬動揺した男も、我を取り戻すと私を押し退け、再度下敷きにされた侭の雛にナイフを振り下ろそうとした…その瞬間。







チャキ、と言う小気味良い音がしたのと同時に、男の喉元に刀が突き付けられた。





『…何か訳分からないんだけどさ、女の子を傷付けるのは良くない事なんじゃないかな?』







肩より下に伸びた髪を首の後ろで一つに縛り、藍色の着物を着た色白の男がそう告げる。顎の辺りまで伸びた前髪のせいか、分け目から覗く愛想の良い笑みが、何処か冷たく感じられる。




刀を突き付けられ、男は目を真っ赤にして着物姿の男を睨む。



『お、お前…一体…!?』

『…新撰組、一番隊隊長…沖田総司。早いとこその子から離れないと、痛い目見るよ?』


言いながら、喉元に刃先が僅かに食い込む。
大した傷ではないが、えらく動揺した男はヒイッと小さく悲鳴を上げると慌ただしく立ち上がり、物凄い勢いで店の出口の方へと走り去って行った。



『…ッた。』



長い事男に下敷きにされていた雛が、苦しそうに起き上がる。

『雛!…大丈夫?』

眉を寄せ、肘を摩る雛に急いで歩み寄る。

『うん…ちょっと転んだ程度。血も出てないし…大丈夫だよ。』

幸い、大きな、怪我はしていない様だ。


『良かった…』

安堵の溜息を漏らすも、ふと今度は五人もの男達の視線が、私達に注がれている事に気が付いた。


『お前達は…何処の者だ?』



ゴツゴツとした顔立ちの男が尋ねる。



『…えっと…私達はドラッグストアの者ですが。あなたたちこそ、店の事務所で何をしてるんですか?』



『ドラッグストア…?』