『ご名答。』
沖田さんが、業とらしく手を叩いてみせる。何も言わず、ただ沖田さんを見つめる土方さん。
そこへ、か細い腕でお盆を支え、フラつきながらも大皿を運ぶ藍さんが戻って来た。
あんなに小さい身体で、あんなに細い手足で、江戸から京へ来るのにどれだけ大変な思いをしたのだろうか。そして、怖い目に遭いながらも笑顔を失わなかった藍さん。会いたい人の為に、私ならそこまで出来るだろうか。
『お待たせしました…っと、みたらし団子とあんころ餅の山盛り皿です!今日はお代を頂きませんので、沢山召し上がって下さいね!』
ドォンと言う音と共に目の前に置かれたのは、大皿にびっしり詰まれたお団子の山。
『今私に出来る事なんてこれくらいしか無くて…。命を助けて頂いたのに、お団子だけなんて申し訳ないのですが…。』
藍さんのすまなそうな表情に、私は思わず口を開いた。彼女は、幸せになるべき人だ。
『あの、お兄さんを捜していらっしゃるんですよね?』
突然話し始めた私に目を丸くする藍さん。
『ええ…そうです。』
『良かったら、私達も協力させて下さい!』
私の言葉に、その場が静まり返る。
『こんなにお団子を頂いて、何もしないなんて出来ません!私や雛は藍さんを助けた訳じゃないのに…。だから、手伝います!』
ハッキリとそう言い切ると、沖田さんが私を見つめながら口を開いた。
『…やっぱり君は、面白いね。女の子がこう言ってますけど、土方さんはどうです?まさか…団子だけ食ってサヨナラ、なんて真似しませんよねー?』
沖田さんがニヤリと口元を引き上げる。
『…チッ、分かったよ。』
渋々頷く土方さん。
ああ…最初から沖田さんはこれが目的だったに違いない。
土方さんと一対一だと断られて終わりだけれど、私や雛が人捜しに賛成すれば、土方さんも頷くしかなくなる筈だと。
『え…あ、ありがとうございます!』
藍さんが深々と頭を下げる。
『良かったね。』
沖田さんが藍さんに微笑むと、涙目になりながら何度もお礼を繰り返した。
『ま、まだ見つかった訳じゃないから…お礼はそれから、って事で。お団子、頂きまーす。』