「あの…お母様、私…」



「いいわ。何も言わなくて。
…それより、みんなのことが心配でしょう?」



「は、はい。みんなも家で手当てを?」



「えぇ。今はみんなぐっすり寝てるわ。こっちよ」






お母様と連れ立って廊下を歩く。



いつもは使われていない客室。



その中でも一番広い部屋に案内された。








「リナちゃんはこの隣の部屋で寝てるわ。柳人くんたちはここ。まだ寝てるかもしれないから静かにね」



「はい」






私は軽く部屋の扉をノックし、中へ入った。



部屋の中にはベットが3つ。



けれどその内一つはカラッポ。



その隣で楓くんはぐっすりと眠っていた。







「よぉ、小梅。起きてて平気なのか?」



「柳人っ!」






いつから起きていたのか、柳人はベットに腰掛けていた。









「良かった…っ。本当に良かった…!!」






柳人の手を握り、その温もりに安堵する。



目頭が熱くなって雫が零れ落ちそうだった。








「…なんかこーしてっと…思い出すな。2年前のこと」



「そうですね…」







2年前、まだ私たちが出会って間もない頃のこと。



柳人が不良に殴られ続けていたのを私が止めた。



確かにあの時もこうして無事を確認して…安心して泣いてしまったんだ、私…。



柳人には泣き顔見られっぱなしだな。